開業までのスケジュール感

写真:カレンダーと時計

開業は物件選びや内装、医療機器の準備、スタッフの手配、各種手続きなど、さまざまな方面で準備をしていかなければなりません。そのため多くの場合、1年以上前から準備を始めます。
一般的には年度が変わる4~5月に開業することが多いですが、希望の物件が見つからないこともあります。
そのため、特定の時期ではなく物件が見つかったタイミングで開業時期を決めるケースも増えていますので、ご自身が時期を優先するのか、納得のいく物件探しを優先するかを判断するためにも、しっかりとした理念を持ち合わせる事が大事になります。

開業の動機を考え、掘り下げていく

開業の動機と目的を掘り下げていくことは、開業における土台を作り上げることでもあります。
なぜ開業したいのか、どのような患者さんにどういった医療を提供したいのか、診療方針や経営方針を具体的に設定しましょう。
診療の内容によって、対象となる患者層は変わります。
対象となる層ごとに、物件選びの基準や広告の打ち出し方なども考えなくてはなりません。
掘り下げていく中で、たとえば、「対象患者を一日に何人診察したいのか」といった具体的な運営方針も決めます。
また、「収入はどのくらい必要なのか」といった、生活面でのことも考えておかなくてはなりません。

1開業地を選ぶ

開業物件の形態を決定する

戸建て、ビル診療、モールなど、開業物件の形態を決定します。地域によって特性があるので注意しましょう。
たとえば、郊外の場合は希望エリアにテナント物件がないこともあり、駐車場を備えた戸建ての開業が多くなります。
一方、都心部では交通の利便性の高さから、ビルやモール内の開業が多くなります。

希望するエリアを決める

エリアの選定は、診療方針に沿って決めましょう。対象の患者層が多く、地域に専門のクリニックが少ないところが狙い目です。また、利便性を重視して、自宅近くにクリニックを構えるのも一つの手です。先生の目指す開業スタイルを基に、開業地の検索・物件案内をいたします。
開業希望地が実際に希望通りの医院開業に適しているかなどを実際に現地入りして調査し、競合医院の数や人口などを基に的確な患者予測数を算出した診療圏調査データをお渡しいたします。

物件を探す

自分で希望の物件を探すのは、時間・労力からも難しいでしょう。
お任せください!弊社が徹底して先生のご希望に合う物件探しをお手伝いさせていただきます。希望に沿った物件を探しましょう。
いくつか選択した物件をさまざまな観点から総合的に判断していきます。まずエリアの総人口や年齢構成が対象とする患者とマッチしているか確認します。その際は、10~20年後も見据えたうえで周辺環境を調査し、一日の来院患者数の予測を立てることが重要です。

エリア内の人の動きや交通の利便性も調べましょう。実際に足を運んでチェックしましょう。さらには、エリア内の競合となるクリニックの数や実態なども確認し、慎重に検討しましょう。

2開業のための資金調達
をする

開業には当然お金が必要です。ここでは、資金を調達するために何が必要なのか説明します。

開業資金の目安

大体の目安として開業するには5,000万円~1億円ほどかかるといわれています。とはいえ、近年は内装工事費用が上がっており一概にいうことはできません。また、運転資金も多めに用意する方がよく、開業に必要な資金は増加傾向にあります。

金融機関へ融資を依頼する

金融機関から融資を受けるには、事業計画書を作成したうえで融資の相談をし、審査に通る必要があります。
融資は、政府系金融機関はもちろんメガバンクや地方銀行などさまざまなところが行っています。

事業計画書の作成は、弊社スタッフ及び提携先にて準備をさせていただけます。事業計画書とは、運営方針のほか、資金の調達方法、使い途、開業した後の収支の見積などを記載した書類です。
金融機関は、事業計画書を検討して融資するかどうかを判断します。

3クリニックの内装工事と
医療機器の選定

物件が決まると、すぐに内装工事と医療機器の選定に取り掛かります。内装レイアウトは工事期間を考慮し開業4ヶ月前までに、医療機器の選定は納期を考慮し3ヶ月前までに確定しておくのが良いでしょう。

内装工事を業者に発注する

作成した診療方針に従い、対象の患者層を考慮したうえで内装レイアウトを決めていきます。レイアウトは専門の設計士を、内装業者は実績のある業者をご紹介させていただくことも可能です。

医療機器を選定する

専門科目によってそろえるべき機器は違いますが、新規にクリニックを開業する場合、どの科でも電子カルテは必須です。

また、医療機器は高額でありながら一定期間で更新されるものも多いため、リースが基本です。特に5~6年で更新するような機器はリースが多くなります。しかし、使用する年数によってはリースのほかに、融資または割賦で購入することもあります。資金調達可能額によってリースと購入を使い分けると、資金計画がうまくいくでしょう。

4スタッフの採用

受付事務や看護師、理学療法士など、診療科によって必要なスタッフを採用します。スタッフ募集については求人サイトや求人誌を利用します。募集時期は開業の3ヶ月前くらいから始めるのが早過ぎず遅過ぎず良いでしょう。

開業前に勤務していた医療機関から、経験豊富なスタッフをスカウトしてくるのも手です。
特に看護師は慢性的な人手不足です。経験豊富なスタッフが常駐してくれれば、人材確保や育成の面でも安心です。

5開業するための行政手続き

保健所に「診療所開設届」を、厚生局に「保険医療機関指定申請」を提出するなど各種手続きが必要です。

保健所毎に細かいルールを決めている事もあるため、必ずテナント契約の前かあるいは、内装の仕様が固まった段階で保健所へ相談に行きましょう。

保険申請手続きにつきましても弊社でサポートさせていただきます。

6宣伝

スケジュールの最終段階として、広告を打つなど集客のための準備をします。広告の方法はクリニックや構える地域性によってさまざまです。
まずは効果の早いHPやポスティング、看板などを検討します。地域の行事や自治会の会合などに積極的に参加して、地道に認知度を高める方法もあります。評判のいい口コミが広がるまでが勝負です。
ホームページの重要な一つです!

新規医院のPR活動は開業当初の来院患者数に大きく関係してきます。
立地や科目を考慮した効果的なPR活動を立案し、それに沿った適切な媒体を提案いたします。同時に、内覧会の企画・準備・実施をコンサルティングいたします。

7開業

内覧会などで近隣に周知することも大切です。
全ての準備が整ったら、いよいよ開業になります。
開業後のフォローについては、いつでもご相談させていただけますのでご安心ください。

図:開業までのガントチャート

開業までに必要な資金はどれくらいかかるか

写真:積み重ねたコイン

開業に必要となる費用には様々ありますが、大きなものでは内装費用や医療機器、小さいものでは広告宣伝費や消耗品費などがあげられます。
これらの費用を準備する為に資金調達を行う必要があります。

まず、自己資金として幾ら準備できるかを検討します。そして残りを銀行からの借入やリース会社からのリースで賄います。
因みに、自己資金の目安は総投資額の5~10%を準備するのが望ましいと言われています。

内科医の場合の参考例

費用 換算金額 概要
内装造作費 2,400万円
  • 院内の床、壁、天井の組立てや装飾、付随する照明、空調などの費用
  • 工事単価は坪あたり40~50万円程度
医療機器 2,000万円
  • 電子カルテ、一般撮影装置、超音波診断装置、内視鏡、心電計、CR等の費用
什器備品 200万円
  • 待合ソファー、診察机及び椅子、休憩室用机及び椅子、電話設備、レジスター、タイムカード等の費用
敷金(or 保証金) 240万円
  • 賃貸借契約に際し、賃料等の契約上の債務を担保する為に預ける費用
  • 月額賃料の6~12ヶ月程度
礼金+仲介手数料 80万円
  • 礼金:賃貸借契約の謝礼として賃貸人に支払う費用
  • 仲介手数料:賃貸借契約に際し不動産会社を通した場合に支払う手数料
  • 各々月額賃料の1ヶ月程度(礼金は2~3ヶ月のケースもあり)
前家賃 80万円
  • 賃貸借契約開始から開業前(内装工事等の準備期間)までに発生する家賃
  • 2ヶ月分程度
運転資金 3,500万円
  • 開業当初の売上が少ない時期でも人件費や家賃等の固定費を支払う必要があり、その費用を予め想定して準備しておく資金
医師会 入会金 200万円
  • 医師会に入会する場合に必要となる費用で金額は各医師会により差異あり
広告宣伝費 300万円
  • 開業時に製作する、開院チラシ、リーフレット、ホームページ、看板等の費用
消耗品+予備費 200万円
  • 開業時の診察券等印刷物、筆記用具等の事務用品、医薬品等及び予備費

開業時に必要となる医療機器について

次に開業時に必要となる医療機器について、診療科目別に見ていきたいと思います。
ご自身の診療科目にはどの程度の医療機器が必要なのか?またいくら掛かるのか?
下記リストをご参考にしていただければと思います。

アイコン:聴診器

医療機器概算リスト
(一般内科)

医療機器名 概算金額 備考
一般撮影装置 230万円
CR/PACS装置 230万円 PACSモニタ2台構成
超音波画像診断装置 300万円 腹部、頸動脈プローブ構成
電子内視鏡システム 680万円 上部、下部スコープ構成
内視鏡洗浄器 180万円
心電計 80万円 ビュワーソフト含まず
電子カルテ 300万円 3台構成
合計 2,000万円
(参考)滅菌器 30万円
(参考)スパイロメータ 15万円
(参考)血圧脈波装置 90万円
(参考)ホルター心電計 60万円
(参考)AED 30万円
アイコン:子供の顔

医療機器概算リスト
(小児科)

医療機器名 概算金額 備考
一般撮影装置 230万円
CR/PACS装置 230万円 PACSモニタ2台構成
血球計数CRP測定装置 350万円
滅菌器 30万円
電子カルテ 300万円 3台構成
合計 1,140万円
アイコン:関節

医療機器概算リスト
(整形外科)

医療機器名 概算金額 備考
一般撮影装置 450万円 天井式
CR/PACS装置 700万円 PACSモニタ2台構成
骨密度測定装置(DXA式) 280万円 前腕骨測定タイプ
リハビリ機器 1,120万円 干渉波、マイクロ波、ウォーターベッド 他
ギブスカッター 20万円
滅菌器 30万円
電子カルテ 400万円 4台構成
合計 1,140万円
(参考)超音波骨折治療器 50万円
アイコン:耳

医療機器概算リスト
(耳鼻咽喉科)

医療機器名 概算金額 備考
診療ユニット 170万円
電動椅子 140万円
ネブライザー 160万円 3人用
電子内視鏡システム 350万円
オージオメータ/聴力検査室 310万円
滅菌器 30万円
画像ファイリングシステム 160万円
電子カルテ 250万円 2台構成
合計 1,570万円
(参考)一般撮影装置 350万円 防護ボックス込
(参考)CR装置 200万円
アイコン:手

医療機器概算リスト
(皮膚科)

医療機器名 概算金額 備考
顕微鏡 30万円
CO2レーザー装置 250万円
Qスイッチレーザー装置 840万円
滅菌器 30万円
電子カルテ 250万円 2台構成
合計 1,400万円
アイコン:目

医療機器概算リスト
(眼科)

医療機関名 概算金額 備考
眼底カメラ 320万円
眼圧計 320万円
静的視野計 380万円
液晶視力表 45万円
診療デスク/電動椅子 80万円
検眼鏡 15万円
スリットランプ 280万円
レンズメーター 280万円
滅菌器 30万円
電子カルテ 300万円 3台構成
合計 2,050万円
(参考)眼科向け電子カルテファイリング機能付 1,000万円 接続モダリティ数による
(参考)白内障手術器械 一式 2,000万円
アイコン:脳

医療機器概算リスト
(脳神経外科)

医療機関名 概算金額 備考
一般撮影装置 230万円
MRI装置 1.5T 7,500万円
CT装置 16列 1,800万円
CR/PACS装置 1,200万円 PACSモニタ2台構成
超音波画像診断装置 270万円 腹部、頸動脈プローブ構成
電子カルテ 300万円 3台構成
合計 11,300万円

それぞれの診療科目で、どの位の広さが必要か?

写真:図面と電卓

必要資金額を大きく左右するテナントの広さについて見ていきたいと思います。

テナント面積が広くなれば、内装費用も大きくなりますし、購入資金や賃貸での敷金等も大きくなってきます。
ご自身の診療科目がどの程度の広さが必要なのかを認識しておくことは資金計画の上では勿論、場所探しの点からも重要になってきます。

必要面積 内装費用 補足事項
アイコン:聴診器

内科

35~45坪 2,700万円 内視鏡有りの場合50坪が理想
アイコン:子供の顔

小児科

30~40坪 2,400万円 2診+隔離室、X線室を設ける場合35坪以上は必要
アイコン:関節

整形外科

60~70坪 3,500万円 リハビリ室は45㎡以上確保
アイコン:耳

耳鼻科

30~40坪 2,400万円 繁忙期には待合室が混雑するので40坪確保するのが理想
アイコン:手

皮膚科

25~35坪 2,100万円 レーザー治療有りの場合、30坪以上必要
アイコン:目

眼科

30~40坪 2,400万円 手術室有の場合最低50坪は必要
アイコン:脳

脳外科

60~70坪 6,000万円 MRI、CT導入のケース。シールド、X線防護工事があるので注意

開業物件の種類

戸建てのクリニック

メリット

自由度が高く、診療方針や経営方針をより実現しやすい点が最大のメリットです。内装レイアウトはもちろんのこと、外装にもこだわれます。駐車場を確保できれば、広域の患者層にアピールできるでしょう。

デメリット

設計からこだわることができるがゆえに、開業までの日数はもちろん、費用も多くかかるため、資金計画なども綿密に検討する必要があります。立地によっては、近くに調剤薬局がなく院内調剤ということも起こりえます。

ビル開業のクリニック

メリット

物件数が多く、人口の多い地域や、交通の利便性の高いエリアなど、好立地な場所を選べる可能性も高いです。加えて、初期費用を低く抑えることができるので、融資も受けやすく、無理のない範囲で開業準備を進めることが可能です。居抜き物件などであれば、さらに費用を安く抑えることができます。

デメリット

内装の自由度が低いことに注意が必要です。クリニックの居抜き物件であっても、専門とする科が違う場合、診療に不都合が生じることもあります。看板なども自由に設置できないことが多く、ほかのテナントとの兼ね合いも生じます。

医療モール内のクリニック

メリット

ほかのクリニックとの相乗効果が期待できることはもちろん、モール自体が医療モールとして広く認知されやすいことがメリットです。医療モールであれば、内装を自分で用意するスケルトンタイプが多く、機器用電源や給排水設備も医療用に適した仕様で備えられています。また、駐車場や看板などもクリニックごとに用意する必要がなく、比較的コストを抑えて営業することが可能になります。

デメリット

ビル開業のクリニックと同じく、建物の構造上の制約がかかることがあります。例えばMRIなどの重量物を設置できないなど使用する医療機器に制約がかかることがあります。
さらに、モール内のほかのクリニックに配慮して、診療内容を調整しなければならないケースもありますので注意が必要です。

最後に、Q&Aもご覧ください。